エロゲのようなトンデモ事件。誘拐婚の『おっとい嫁じょ』事件

法律

 大学に入学して、初めて法学を学んだ時、その判例集にとんでもない事件が載っていて、のけぞったことがある。
 それが『おっとい嫁じょ』事件である。

事件の経緯

 戦後しばらく経ったのちの、1959年。鹿児島県のとある地方で、婚期を迎えた青年が、外部からやってきた20歳の女性と結婚しようと考えた。ところが、その相手の女性に断られたために、義兄と伯父とともに、その女性を誘拐し、集団レイプしたというものである。
 それこそが土地の風習の『おっとい嫁じょ』。女性側が婚姻に同意をしなくとも、男性が女性を誘拐して、その女性をレイプをしたら、女性側は、そのレイプをした男性と結婚しなければならない、という風習があったという。問題となった男性の母親も食事の際に誘拐されて、『おっとい嫁じょ』で結婚したという。
 レイプをした以上、女性がお嫁に来るものと思っていた男性のもとに訪れたのは、警官だった。
 これは、法律で決められた人権と風習、どちらが優先されるべきか、というとても重要な裁判なのである。

結果と世界の誘拐婚

 レイプをした男性側は、「風習」だと言い張ったが、そんなことが裁判で通じるわけもなく、法律と風習では当然の如く、法律が優先された。結果は懲役3年となった。
 この事件については、義兄や伯父もレイプに参加しているように、女性の抵抗を抑えるために集団で参加することがあったとも言われる。
 後世、これは一部地域のこととされているが、実際はどうだったかは定かではない。

 ただ、世界的に見ると誘拐婚というのは珍しいものではない。ジェンダーギャップ指数で125位の日本よりもはるかに順位が高い84位のキルギスには、同じような誘拐婚であるアラ・カチューという風習があり、誘拐婚が頻発しているという。この誘拐婚の比率は調査によって異なるが、低い推計値でも3分の1以上、高い推計値だと68~75%の婚姻が誘拐婚であるとされる。
 また、エチオピアでは国全体の69%の結婚が誘拐婚ともいわれる。ところが、エチオピアのジェンダーギャップ指数も75位と日本よりもはるかに高い。

 ジェンダーギャップ指数が欠陥指標なのか?
 それとも人権を無視した誘拐婚を進めた方が、本当は女性にとっては幸せなのか?
 誘拐婚というマイナス要素を大きく超えるほどに、日本の専業主婦希望は女性の自立の阻害要因なのか?

 『おっとい嫁じょ』は法治国家にあるまじき悍ましい風習であることは間違いない。だが、そんな悍ましい風習がまだ残っている国の方が、ジェンダーギャップを絶対視するのであれば、「見習うべき女性の社会進出が進んだ国」ということになってしまう。

 ただ、誘拐婚のある世界の方が、少子化防止にもなるし、いま日本で大量発生している婚活高望みで結婚できないままに終わった貧困女性というのもまず存在できないから、社会全体でみたらよかったということになりかねないというのが、非現実的な専業主婦希望が溢れる今の日本の悲惨な現状なのかもしれない。
 日本ではこれ以上ないくらい女性が優遇され、女性の権利も保証されている。でも、「王子様に誘拐されないほどに安全」な日本において、女性が幸せをつかむためには、女性自身が自立して努力する必要があるのだ。

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